おとなの睡眠・こどもの睡眠

新型コロナウイルス拡大によって、リモートワークをされている人が増えています。そんな中、皆さんの睡眠リズムはどうでしょう。ぐっすり眠ってスッキリ起きられていますか?よい睡眠は、怒りっぽくならずにご機嫌で過ごせる下地を作ります!

今回は日本ゲートキーパー協会TOKYO(GKT)理事で精神科医の穂積桜が「睡眠の知識」をお伝えします。

日本人の睡眠:おとなもこどもも世界最短

皆さんすでにご存知かもしれませんが、おとなもこどもも日本人の睡眠は世界最短です!0〜36ヶ月のこどもの睡眠時間についての報告を見てみましょう。

出典:Mindell et al.  Cross-cultural differences in infant and toddler sleep. Sleep Medicine 11 (2010) 274–280    

赤の線がベッドに入った時間で、青の棒グラフが睡眠時間です。

どうでしょう。他の国に比べ、日本のこどもの睡眠時間が短いことがお分かりいただけたでしょうか。

コロナで通勤時間は短縮するかも!コロナがもたらした意外な影響

こどもの睡眠はおとなの生活習慣の影響をダイレクトに受けます。日本の働く世代の睡眠不足は深刻で、残念ながら年々悪化しています。

寝かしつけをするおとなの帰宅時間が遅ければ、こどもの寝る時間が遅くなるのは当然です。

出典: 目覚め方改革プロジェクト

しかし、新型コロナ拡大に伴い、リモートワークが広がるのを見て、私はここにひとすじの希望を感じています。リモートワークによって通勤時間がなくなる、または短くなると、生活時間を調整する余地が出てくるかもしれないからです(ただし、学校や学童、幼稚園、保育園などが正常稼働した後の話ですが)。

今は通勤時間が長くて、寝かしつけが遅くなってしまうご家庭も、今後は生活スタイルの選択肢が増えるかもしれません。

ポストコロナに向けた体内時計の準備

さて、当面新型コロナ禍が落ち着くまで、私たちが気をつける点は何でしょう?それは、こどもの体内時計リズムです。

こどもは、おとなよりも光への感受性が高く、体内時計が影響を受けやすいのです。具体的には寝る前に光を浴びると、宵っ張りになりやすいことがわかっています。

一説には、水晶体がすごく澄んでいるからという話もありますが、夜寝る前のスマホや動画、テレビ、パソコンなどは、おとな以上にこどもの体内時計に影響してしまうのです。長い休み(自粛生活の今もある意味では長い休みですね)の後は不登校のこどもが増えますが、体内時計が休み中に乱れてしまい、朝起きられなくなるこどもが一定割合いることもわかっています。今から、ポストコロナに向けた体内時計の調整を心がけたいですね。

また、就寝中に体を休めて免疫を整えたり(コロナにかかりにくくすることも含まれます!)、体や脳が成長するためには、メラトニンという熟睡ホルモンが大きな役割を果たすと言われています。

このメラトニンは、日中浴びる光の量と時間に比例して、夜中にたくさん放出されます。皆さんも海や山で一日中、キラキラ光るお日様のもとで遊んだ日の夜は、泥のように眠った経験があると思います。

一日中在宅だと外の強い光を浴びることができず、メラトニンが出にくくなってしまっているかもしれません。

「こどもがうまく睡眠を取れていないみたいだ」「熟睡していない」「睡眠リズムが崩れてきた!」という方は、ぜひ以下のことを試してみてください。

1:周りに人の少ない朝やお昼休憩時は外で遊ばせる

2:屋内でも、窓際やベランダ、駐車場など外の光を浴びられる場所で過ごす時間を作る(雨の日でも外の光は室内の電灯とは比べものにならないほど強いのです!)

3:就寝1時間前からは、スマホ、動画、テレビ、パソコン以外のことをさせる

(筆者は、子供が寝る1時間前から居間の電気を薄暗くし、薄暗い中でお風呂に入れ、そのあとは布団でトンネルを作ったりおばけごっこをして、最後は本を読んで寝かせることが多いです)

学校や保育園の休校・休園に伴い、在宅でこどもと一緒に一日を過ごすと、仕事を終わらせる前に力尽きてしまうこともあるかと思います(私もそうです!)。夜は、寝かしつけの前にうっかり動画を見せてしまってこどもがいつもより宵っ張りになり、日中に終えられなかった作業をする時間がさらに短くなる・・・こういう悪循環は起きていませんか?私も2歳児を育てる母親ですが、こどもの夜更かしは良くないと思っていても、たまにこうなってしまう日もあります。

そんな日は仕方がないとして(気にしすぎないようにしましょうね!)、翌日の夜からは「寝る前は薄暗く」の生活に戻してみましょう。

また最近人気の自宅キャンプもオススメです。体内時計が夜型(宵っ張り)になったおとなたちを対象として1週間キャンプ生活を送らせた結果、体内時計が自然に戻った、という面白い研究報告もあります。長い自粛生活ですが、ここから体内時計を戻して、コロナ禍が過ぎた頃には前よりも健やかな睡眠が皆さんに訪れますように!

〔GKT 穂積桜〕


 

旅の深呼吸

皆さんこんにちは。GKT理事の宇野浩です。ご自宅で過ごす時間が増えていらっしゃると思いますが、今日は、一緒に旅した気分になっていただけたらと、私がずっと続けている「旅」について、少しお話したいと思います。

2006年から続けてきた全国の旅。思い立って40過ぎから大型バイクにまたがり、中年ライダー気取りで走破した距離は延べ2万キロに及びます。

東京から青森までの800キロ。連絡船で4時間、函館から稚内まで650キロを走行し、そして日本最北端の稚内宗谷岬をスタート地点として、順次北から南へ。そして、沖縄先島諸島、南波照間までを走り抜けました。

ただし、やみくもには走っている訳ではありません。ポケットには司馬遼太郎の紀行文集『街道をゆく』をしのばせながら、司馬が歩いた諸街道を、本に沿って忠実に足跡をたどっているのです。司馬が観た風景、司馬が出会った人々、泊まった宿屋泊まった部屋へ自分も訪ねて同じように寝てみます。司馬が見て感じ、伝えようとしたものはなんだったかを、その場で感じ取る旅にしたいのです。

私たちは日常生活の中で、特別意識せずに過ごしていること、身についていることがあります。たとえば、なぜある行為を「恥」だと感じるのか、「侘び」の心根はどこにあるのかなど。それを理解するヒントが『街道をゆく』にはあります。また、代々大切に守り受け継いできたこと、長くにわたり祈りを続けてきた場所、伝統として磨き伝えられてきた技なども多く紹介されています。『街道をゆく』の中にそのヒントが沢山見いだされます。一方地場では、歴史を作ってきた人々の心に触れることもできます。オホーツクモヨロ貝塚を発見した考古学者の米村喜男衛翁、探検家の最上徳内と松田伝十郎、思想家の秋田安藤昌益、東洋史学者の内藤湖南、民俗学者の菅江真澄や上勢頭亨(かみせど)など、それは綺羅星のごとくに尽きません。その大きな思想、知識が育まれた風土や土壌はどのような姿であったか、その原風景に立って思いを馳せるのが楽しみのひとつです。

また『街道をゆく』をたどることで、3つのキーワード、米・鉄・禅に行き当たります。この視点で読んでみると、司馬はキーワードから独自の視点で歴史・地理・人物について考察し、日本人の「元」、日本の「祖型」を3つの言葉から解き明かそうとしたのではないかと思うのです。

現代に生きる私たちが何故その様に振舞うのか、何故そう感じるのかなど、私も司馬のように「心のありか」を自分なりに感じ取ることをライフワークとして、今年もその先の『街道をゆく』たどる旅を続けています。

〔GKT 宇野浩〕